検査の種類
非確定的検査
コンバインドPLUS(オスカー)検査
当院では、初期血清マーカー(PAPP-A, free βhCG)の組み合わせ検査も取り入れています。超音波によるNT計測とこの血清マーカーの組み合わせ検査は、欧米やアジア・アフリカなど世界中で妊娠初期検査のスタンダードとして使われており、OSCAR“オスカー検査”あるいは、“コンバインド検査”とも呼ばれます。妊娠初期(11~13週)に行う母体血清マーカー(PAPP-A, free βhCG)と正確に計測された赤ちゃんのNTを組み合わせることにより、90%以上で21、18、13トリソミーの検出が可能となります。
当院では、オスカー検査、コンバインド検査よりさらに精度を上げるために、胎児ドックすべての項目(NT計測のみでなく、鼻骨、静脈管血流、三尖弁血流、心拍数)と血清マーカーを組み合わせます。この検査を“コンバインドPLUS検査” と呼びます。
結果は、約2日後に出ますので、後日外来で結果説明を行います。
初期胎児ドックを受けられて染色体異常のリスクが低いと出た妊婦さまが、コンバインドPLUS検査(胎児ドック+血清マーカー検査)にステップアップすることで、さらに安心を得ることができます。
クアトロ検査(中期血清マーカー検査)
妊娠15~17週頃に行います。妊婦さまの血液中の4つの項目(AFP・ hCG・ uE3・InhibinA)を測定して、胎児が21トリソミー、18トリソミー、開放性神経管障害(脊髄髄膜瘤など)であるリスクを推定する検査です(確定診断する検査ではありません)。この検査では、ダウン症の約86.9%で異常値を示します。
新型出生前検査(NIPT)
「新型出生前検査 (NIPT)」 とは、妊婦さまの血液中に含まれる、お腹の中の赤ちゃん(正確には胎盤由来)のDNA断片(cell-free DNA; cfDNA)を解析することで、赤ちゃんの特定の染色体疾患を調べる検査です。
NIPTによって調べることができるのは、21、18、13トリソミーだけです。NIPTは、21、18、13トリソミーに焦点を絞れば非常に検出率が高く、偽陽性が少ない有用な検査といえます。
くわしくは以下のページをご覧ください。
確定的検査
羊水検査
妊娠16~17週頃に行うのが最適です。超音波で胎児やへその緒を観察しながら、細い針を使って羊水を約20ml採取します。羊水中には赤ちゃんの細胞が浮いているためそれを採取します。検査後は30分~1時間安静に過ごしていただき、経過を観察した後にご帰宅となります。
絨毛検査
妊娠12~14週に行うのが最適です。超音波で観察しながら、絨毛(胎盤となる組織)のごく一部を採取します。30分~1時間安静に過ごしていただき、経過を観察した後にご帰宅となります。絨毛(胎盤)が付着している部位によっては本検査が困難なことがあり、その場合は羊水検査を選択します。
確定的検査とリスク
羊水・絨毛検査に伴う流産のリスクはどうしてもゼロではありません。
従来は、羊水・絨毛検査ともに流産リスクは1/300(0.3%)といわれてきましたが、近年の報告では、羊水検査を行った13,011名と検査を行ってない232,680名、絨毛検査を行った63,723名と検査を行なっていない330,496名を比較した検討の結果、流産リスクは0.1%前後となり、あまりリスクの増加はないと報告されています。
<参考資料>
Risk of miscarriage following amniocentesis or chorionic villus sampling: systematic review of literature and updated meta-analysis.
Salomon LJ, Sotiriadis A, Wulff CB, Odibo A, Akolekar R.Ultrasound Obstet Gynecol. 2019 Oct;54(4):442-451.
検査の種類と特徴
非確定的検査(侵襲なし)
確定的検査(侵襲あり)
クアトロ検査®
オスカー検査(コンバインド検査)
胎児ドック
コンバインドPLUS検査
新型出生前検査(NIPT)
繊毛検査(CVS)
羊水検査(AC)
検査時期
15〜17週
11〜13週
11〜13週
11〜13週
9〜10週以降
11〜14週
16週〜
対象疾患
21トリソミー 18トリソミー 13トリソミー その他形態異常
21トリソミー 18トリソミー 13トリソミー その他形態異常
21トリソミー 18トリソミー 13トリソミー その他形態異常
検査内容
血液検査
超音波検査(NTのみ) +
血液検査
超音波検査(NTを含む5つの超音波マーカー)
超音波検査(NTを含む5つの超音波マーカー) +
血液検査
血液検査
繊毛穿刺
羊水穿刺
21トリソミーの検出率(感度)
80%
90%
90〜95%
95〜98%
99%
ほぼ100%
ほぼ100%
検査結果の出方
確率(1/◯◯◯)および 陽性/陰性
確率(1/◯◯◯)および 陽性/陰性
確率(1/◯◯◯)および 陽性/陰性
確率(1/◯◯◯)および 陽性/陰性
陰性/陽性/判定保留
染色体の写真(核型)
染色体の写真(核型)
検査の特徴
流産リスクなし 偽陽性※が多い 検査実施施設が少ない 比較的安価
流産リスクなし 偽陽性※が多い 検査実施施設が少ない 比較的安価
流産リスクなし 偽陽性※が多い 検査実施施設が少ない 比較的安価
流産リスクなし 偽陽性※が多い 検査実施施設が少ない 比較的安価
流産リスクなし 陽性適中率が高い 検査実施施設が少ない 高価 実施時期が早い
流産リスクあり 検査実施施設が少ない 実施時期が早い 胎盤モザイクの影響あり
※偽陽性:疾患がないが検査結果「陽性」となること
各非確定的検査の検出率の比較
非確定的検査および確定的検査の検査時期の比較
どのように出生前検査を選べばよいか?
「出生前検査」を希望されるにはさまざまな理由があると思います。
NIPTを考えられるのも1つですが、たとえば、私たち大人が病院を受診するときも、診察をせずに血液検査だけで判断されることないように、赤ちゃんを診ずに血液検査のみ行うことに疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
当院は「Fetus as a Patient(胎児も患者の一人)」 をモットーに、まず赤ちゃんに向き合い、しっかり診察しています。そのため、当院では超音波検査で赤ちゃんをしっかり診る胎児ドックとNIPTを組み合わせる方が多くいらっしゃいます。
カウンセリングの中でお話をうかがいながら、適切な検査を選択していきましょう。
「何となく心配」という方や「高齢妊娠」等が理由で、比較的頻度が多い21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、13トリソミーを検査したい場合は、妊娠10週から検査可能なNIPTが非常に有用です。
21、18、13トリソミー以外にも、赤ちゃんの形態を全般的に診るには、胎児ドック(胎児精密超音波検査)を併用します。
※胎児ドックを行った結果、赤ちゃんの形態異常を認めたり、“リスクが高い(陽性)”と判断した場合、NIPTをせずに確定的検査(羊水検査、絨毛検査)を行うことをおすすめします。なぜなら、NIPTを行い陰性と出ても安心が得られないためです。 当院で行う胎児ドックは、同日に結果をお伝えするようにしています。
胎児ドックから始まる出生前検査 (これは出生前検査の流れの一例です)
「妊婦健診時の超音波検査で異常を指摘された」などの理由でご心配な方は、NIPTではなく胎児ドックで精密超音波検査を行った後、NIPTや確定的検査に進むとよいでしょう。
〈もう少しくわしく〉
羊水検査、絨毛検査でわかること
非確定的検査で赤ちゃんの疾患が疑われた場合、確定的検査である羊水検査か絨毛検査を行います。2日後には、21、18、13トリソミー、XやY染色体の数の変化の結果のみ速報(FISH法)をお伝えします。最終結果(G分染法)は、約2週間後に結果をお伝えします。
染色体検査「Gバンド法」と「FISH法」
採取した絨毛や羊水中の細胞で、胎児の染色体を検査するといっても数種類あります。「Gバンド法」は、染色体検査のゴールデンスタンダードです。まず採取したわずかな細胞を培養して数を増やします。その後、染色して顕微鏡下に観察します。Gバンド法の結果は、染色体が番号順に並べられた形で届きます。日数がかかりますが、すべての染色体について観察することができます。
「FISH法」は、赤ちゃんの細胞を培養せず、21番、18番、13番、XおよびY染色体の数の変化を、迅速に検出する検査です。この検査で知ることができる染色体の数の変化は、出生前に見られる染色体異常の80%を占めています。
特殊FISH検査
微細欠失症候群は、微細染色体異常と呼ばれ、絨毛検査や羊水検査などで一般に行われている検査だけでは検出できない、染色体の細かな異常のことです。何らからの理由で、微細欠失症候群などが疑われる場合は、特殊FISH検査を付け加えることで、一般的な染色体検査(G分染法)で検出できない微細染色体異常を診断することが可能です。
マイクロアレイ検査
胎児ドック等で胎児異常が疑われるが染色体の変化を認めなかった場合、マイクロアレイ検査という更なる精査を行うことが可能です。赤ちゃんに病気が疑われたが、染色体検査が正常と出た場合、マイクロアレイ検査を用いることで新たな原因が見つかり10%診断率が上昇します。特に、心臓と腎臓の病気が疑われた場合、診断率が上がります。
〈参考資料〉
Callaway j, Shaffer LG, Chitty LS, et al: The clinical utility of microarray technologies applied to prenatal cytogenetics in the presence of a normal conventional karyotype: a review of the literature. Prenatal Diagn 33: 1119-1123, 2013
江川真希子 山田崇弘 周産期医学 52: 645-649,2022
検査費用
出生前検査に関する費用は次のとおりです。
どの検査を選ぶかの判断材料として費用も重要なポイントかと思います。ご不明な点は、カウンセリングの際にお気軽にご相談ください。
非確定的検査
検査時期
検査項目
価格
非確定的検査
10週以降 新型出生前検査(NIPT) 88,000円
NIPT検査前カウンセリング 11,000円
NIPT結果説明 5,500円~11,000円
NIPTを受ける前に、カウンセリングが必要となります。
検査時期
検査項目
価格
非確定的検査
11~13週
初期胎児ドック 29,700円
初期胎児ドック(当院分娩予約) 24,200円
コンバインドPLUS検査(胎児ドックを受けられた方が、オスカー検査を追加する場合) +29,700円
15週以降 クアトロ検査® 19,800円
結果説明 5,500円
確定的検査
検査時期
検査項目
価格
確定的検査
11~14週 絨毛検査 154,000円
16週以降 羊水検査 143,000円
結果説明・エコーチェック 5,500円
他院でNIPTを受け、確定的検査のために当院を初めて受診される方は、検査前カウンセリングとして11,000円が必要となります。 その他、出生前検査に関する相談・カウンセリングは5,500円となります。
オプション:マイクロアレイ検査:99,000円/特殊FISH検査(微細欠失など):38,500円
NIPT結果「陽性」・「判定保留」場合に行う、確定検査は、次の料金となります。
羊水検査 77,000円
絨毛検査 88,000円
胎児ドック、羊水検査、絨毛検査は赤ちゃん一人あたりの料金です。
出生前検査は完全予約制です。お電話にて予約をお取りください。
インターネット予約ではありませんので、ご注意ください。
TEL059-378-8811
「出生前検査」を受診の方は、問診票をご記入の上、ご来院いただくとスムーズです。
[出生前検査 問診票] Download